第二弾は,企業法務の分野で有名な中村直人先生が書かれた本書です。



訴訟の心得


 目次はこんな感じです。


第1章 訴訟の見立て

第2章 主張

第3章 証拠

第4章 期日

第5章 証人尋問

第6章 判決対応

第7章 企業訴訟関連の判決とその特徴

第8章 和解


 目次を見ていただければ一目瞭然ですが,実際の民事訴訟の流れに沿って,著者の考える「気をつけるべきこと」が述べられていくスタイルになっています。

 「はしがき」には,

「本書は,訴訟の経験がまだ少ない弁護士や,企業の中で訴訟を担当する部門の人たちのために,実務上気をつけた方がいいことを述べたものである。」
「想定しているのは,企業の代理人として訴訟を担当する弁護士である。一般人同士の訴訟(いわゆる一般民事事件)は,スコープから外している。人事訴訟や行政訴訟,刑事事件なども外している。」

と書かれていますが,本書に書かれている「訴訟の心得」は,民事訴訟全般に通じて言えることであって,決して企業法務だけにとどまる話ではないように思いました。



 本書は,「はしがき」に述べられている通り,企業法務に弁護士として関わり続けてきた著者が,弁護士の立場として考えてきた「ノウハウ」を,訴訟の進行に沿って述べていく内容になっています。

 事実認定で学生や修習生が基本として学ぶこと(「動かしがたい事実」と「ストーリー」との整合性や,動かしがたい事実は(争いない事実のほかは)主に書証等で立証され,人証は「証人は,整合性のあるストーリーが述べられれば,それでよい。」と書かれるなど)から始まって,期日においてどう動くべきか,裁判官の発言にどのように反応すべきか,などなど,かなり実務的なことまで書かれており,学習者としてはとても勉強になります。

 本書は,「主張書面は短く」「罵詈雑言は書かない」などの「訴訟におけるマナー」や証人尋問の技術など,一般的な民事訴訟全般において代理人が意識しておかなくてはならない注意点がわかりやすく説明されていて,別に企業法務弁護士にかかわらず役に立つ本だと思います。

 ただ,それらに加えて,「企業間訴訟の特徴」が書かれており,一般民事訴訟との対比で企業間訴訟が理解できることが,本書の特長の一つです。
(例えば,企業間だとメールや契約書等が組織的に保管されているから,企業間紛争では事実レベルで大きく争われることはあまりなく,したがって,必然的に,法律解釈や事実評価のレベルで争われる事件が多くなるという指摘は,思わず膝を打ちました。)


 最終的には地裁,高裁,最高裁それぞれの判決文の読み方や,企業間紛争における和解について著者が考えるところが述べられ,

「 弁護士の執念の調査,熟慮と,魂のこもった迫力の書面が裁判官の心を動かすのである。そして勝ったら必ず喜ぶことである(『ONE PIEACE』のルフィのように)。
  それが戦系の弁護士である。」

という言葉でしめられます。 


 本書は170頁あまりの短い本であって,かつ中村先生の文章は読みやすいので,さらっと読めてしまうと思いますが,折にふれて読み返し,初心(?)を思い出すようにしたいなあと思います。