これで、75点(席次3番)でした。

試験終了後かなり経ってからの再現でしたので、公法系に比べると再現度は落ちるかとは思いますし、暗記すべき事項も少し精密さを欠いていると思います。ただ、構成は本番のままです。

公法系も、倒産法も、ともに足切りが異常に多かった科目です。こと倒産法に関しては、今年度の出題範囲を勉強していなかった人が多かったのではないかと想像します。あと、例年あてはまることですが、倒産法は分量が多いです。3時間もありますが、全然足りないように思います。





平成26年度司法試験論文式選択科目(倒産法)第1問

 

第1問

 

第1 設問1

1.Bの届出の可否

⑴ BのAに対して有する1000万円の貸金債権は,破産手続開始前(平成22年10月20日)の金銭消費貸借契約に基づいて生じた財産上の請求権(民法587条)であるから,破産債権である(破産法2条5項。以下,「本件破産債権」という。)。破産債権は,届出によらなければ行使できないのが原則であり(同法100条1項,111条1項柱書),本問,Bは債権届出期間内に届出をしていないため,届出ができないのが原則である(同法111条1項柱書)。

⑵ ただ,同法112条1項の適用により,例外的に届出をすることができるかが問題となる。「その責めに帰することができない事由」とは,債権届出期間内に届出できなかったことにつき無過失であることをいい,破産債権者が破産手続の開始を過失なく知らなかった場合が含まれると解する。

 本問,Bは外国に長期滞在しており,Aについての破産手続開始決定を自ら知ることは困難であった。また,破産手続開始決定の通知はCが受け取っているが,BとCとの間には実質的に利益相反の関係があり,CがBに知らせることは期待できない事情があった。以上のことからすれば,BはAの破産手続開始について過失なく知らず,よって届出ができなかったといえ,「その責めに帰することができない事由」があったといえる。

⑶ よって,Bは本件破産手続が継続している事実を知ってから「一月以内」であれば,裁判所に対して本件破産債権の届出をすることができる(同法112条1項)。

2.Xの認否

⑴ Xは,本件破産債権について,破産債権者がBであることを認めることができるか。本件破産債権は,破産債権者がCであることについて既に確定しており(破産法124条1項),XがBと認めることは「確定判決と同一の効力」(同法124条3項)に抵触してできないのではないかが問題となる。

⑵ まず,破産手続が集団的権利確定手続であることに照らせば,「確定判決と同一の効力」(同法124条3項)とは,既判力を指すと解すべきである。よって,確定に反するような認否を破産管財人が行うことはできないのが原則である。

 しかし,この既判力も一切変更を許さないものではなく,再審事由(民訴法338条1項各号)があるときは,破産管財人は確定した破産債権者表に反する認否もなしうると解する。なぜなら,破産手続終結前における権利関係は未だ流動的であって,確定後も変更する必要性は存在するし,また,再審事由がある場合の権利関係確定に対する利益は保護すべきでないからである。

 本問,Bは外国に滞在しており,自ら破産手続開始決定を知ることは不可能であり,かつ通知を受け取ったのは利益相反関係にあるCである(Bへの通知は期待できない)から,実質的にみてBは破産手続開始についての手続保障が欠けているといえる。これは,民訴法338条1項3号の事由に該当する。

 よって,本問においては再審事由が存在するから,Xは確定した破産債権者表に反する認否をなしえ,Bを破産債権者として認めることができる。

第2 設問2

1. Bの主張は,本件破産債権の債権者がCであることに反する主張である。よって,「確定判決と同一の効力」に反する主張として遮断されないかが問題となる(破産法124条3項,221条1項前段)。

 「確定判決と同一の効力」とは,既判力を指すと解する。そして,最後配当後,すなわち破産手続終結後(同法220条1項)は,既判力に反する主張は原則としてできないと解するべきである。既判力に反する主張を行うためには,再審手続きを経て既判力を取り除く必要がある。なぜなら,破産手続終結前と異なり,終結後はもはや権利関係は流動性を失い,変更する必要性が低いし,かつ破産手続終結により確定した権利関係に対する信頼が強く生じるといえるからである。

 本問,Aの破産手続は最後配当を終えて既に終結している。よって,Bの本件破産債権がBに帰属するとの主張は,本件破産債権の債権者はCであることに抵触する主張として,既判力によって遮断される。BはCに対して当該主張をなしえない2.Bが当該主張をCに対して行うには,別途再審手続を経る必要がある。設問1との均衡が問題になるが,集団的権利確定手続たる破産手続の終結に対する法的安定要請は高いことを考えればやむを得ない。

第3 設問3

1. Dの請求は,平成25年3月に締結した,DのAに対する500万円の損害賠償債権を目的とする準消費貸借契約(以下,「本件準消費貸借契約」という。)の履行請求である(民法588条。以下,「本件履行請求」という。)。これに対しAは,①DのAに対する500万円の損害賠償債権は破産手続開始前の原因に基づく財産上の請求権であるため破産債権であり(破産法2条5項。以下,「本件破産債権」という。),よってこの本件破産債権は平成25年2月のAに対する免責許可決定をもって免責されている(同法253条1項柱書),②本件準消費貸借契約の締結は破産債権の免責後の弁済に当たり,本件準消費貸借契約の締結は任意性を欠くため無効であるとし,本件履行請求は認められないと反論する。

2.反論①について

⑴ Dは,Aの反論①に対し,本件破産債権には破産法253条1項2号事由と6号事由が存するため,免責されないとの主張を行う。以下検討する。

⑵ 2号事由

 「悪意で加えた」(破産法253条1項2号)とは,同項3号が「故意または重大な過失により」と規定して文言を書き分けていることから,悪意重過失を超えた害意を指すと解するべきである。

 本件破産債権は,たしかにAが独断でDからの預り金を流用したことにより発生した損害賠償請求権であるが,AにはDに積極的に損害を与える意図はなく、単に投資商品Mの償還を軽信した過失(ないし重過失)があるのみであった。したがって,本件破産債権は重過失による損害賠償請求権とはいえても害意まではなく,「悪意で加えた」損害賠償請求権とはいえない。

 よって,2号事由は存在しない。

⑶ 6号事由

 Aは,Dに対する本件破産債権があることを知りながら,債権者名簿に本件破産債権につき記載しなかったため,「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった」(同法253条1項6号本文)といえ,6号事由があるようにも思える。しかし,Dもまた,Aについて本件破産手続が開始したことを知っていたのであり,同号かっこ書きに該当する。よって,6号事由も存在しない。

⑷ 以上より,Aの反論①は認められる。本件破産債権はAに対する免責許可決定により免責される。ここで,免責(同法253条1項柱書)が何を指すかが問題となるも,自然債務になると解する。文言上「責任を免れる」としかなっておらず、消滅すると解するより自然債務になると解した方が文言上自然であり,かつ破産者の経済生活の再生のためにはそれで十分だからである。

3.反論②について

⑴ Dは,たとえ本件破産債権が免責されているとしても,債権が消滅したわけではなく自然債務になっただけであるため,任意にした弁済は未だ有効である,本件準消費貸借契約の締結はAの任意になした本件破産債権の弁済に当たる(民法588条)ため有効であって,本件履行請求は認められるべきである,との主張を行う。

⑵ 免責許可決定がなされた破産債権は,前述の通り,自然債務となり,その弁済は,債務者が任意にすれば有効である。ここで,免責(破産法253条1項)の趣旨は,列挙された請求権を除く破産債権を一律自然債務とすることで,破産者の経済生活の再生をできる限り図ること(同法1条参照)にある。この趣旨に照らせば,破産者は破産債権から解放される方が望ましく,たとえ破産者による免責後の任意の弁済は有効であるとしても,その任意性は厳格に解するべきである。わずかでも強制の契機が見られたら,弁済は任意性を欠いて無効となると解する。

 本問,たしかにAは本件破産手続開始前から本件破産債権を履行しようと考えており,本件準消費貸借契約も,その思いのまま締結している。しかし,実際にDによる本件履行請求をAが経済的困窮を理由に拒絶したことからもわかるように,契約締結の平成25年3月(履行拒絶の1年前)は未だAの生活は経済的に余裕を欠いていた。そのような余裕のない状態でなされた本件準消費貸借契約締結は,履行強制の契機が全くなかったとはいえず,Aによる本件準消費貸借契約締結は任意になされたとはいえない。

 よって,Dの主張は認められず,本件準消費貸借契約の締結は任意性を欠いて無効である。

4. 以上より,Dの本件履行請求は認められない。





平成26年度司法試験論文式選択科目(倒産法)第2問

 

第2問

 

第1 設問1

1. Cが,破産手続の方が貸金債権及び敷金返還請求権の回収にとって有利な事情があると考えた理由は,破産手続の方が,民事再生手続に比べて,両債権をCの有する賃料債務と相殺できる額が多く,相殺による回収(破産法67条以下,民再法92条以下)がより多く見込まれるからである。

Cの有する両債権は破産債権(破産法2条5項)ないし再生債権(民再法84条1項)に当たる。破産手続ないし再生手続開始時にCはAに対し賃料債務を負担しているため,相殺権を行使できる(破産法67条以下,民再法92条以下)ところ,その相殺額に違いがある。以下,破産法の規律,民事再生法の規律を順に検討し,詳述する。

2.⑴ 破産法の規律

ア 破産法においては,破産債権者が破産手続開始時に破産者に対して債務を負担するとき,破産手続によらずに,相殺権を行使できる(同法67条1項)。この相殺権の行使には,特に制限がない。すなわち,破産債権は破産手続開始によって金銭化(同法103条2項),現在化(同条3項)され(相殺適状となり),期限若しくは解除条件付きを問わずに相殺できる(同法67条2項前段)。破産債権者の負担する債務に期限若しくは条件が付いていても相殺できる(同項後段)。破産債権が停止条件付債権だった場合,将来の相殺に備えて,債権額を限度として弁済の寄託を請求できる(同法70条)。これは停止条件の成就を解除条件とする弁済である。条件成就によって弁済が無効となり,相殺適状が発生し相殺した後,寄託した弁済金は財団債権として手続外弁済を受けることによって債権を回収することになる(同法148条1項5号)。

破産者が自らを賃貸人とする賃貸借契約を破産債権者と結んでいた場合,賃貸借契約は対抗力を備えている限り履行を強制され(同法56条1項)、賃借人の有する敷金返還請求権は上記70条の規律を受けることになる(同法70条後段)。

イ このように破産手続において相殺が広く認められている趣旨は,破産手続が集団的な清算手続であって手続終結後の事業継続を予定しておらず,手続内で破産者の権利関係を全て清算する要請が働くところにある。

ウ 本問において,まず,Cの有する甲ビル賃借権は,引渡しによる対抗要件を具備しており(借地借家法31条1項),破産手続開始によって解除されることはない(破産法56条1項)。この対抗要件具備はDによる抵当権設定登記に先立つため,Dによる抵当権実行(同法65条1項)によっても消滅することはない(民法177条)。よって,Cは甲ビルの使用収益を継続できるのが前提である(平成30年まで,約8年間)。

 CのAに対する貸金債権(以下,「本件貸金債権」という。)1200万円は,破産手続開始によって弁済期が到来する(破産法103条3項)。そして,CはAに対する賃料債務の期限の利益を放棄することによって,本件貸金債権と12か月分の賃料とを相殺することができる(同法67条2項前段後段)。こうして,Cは貸金債権全部を回収することができる(12か月,賃料を別途支払うことなく甲ビルを使用収益できる)。

 CのAに対する敷金返還請求権(以下,「本件敷金返還請求権」という。)1000万円(Cの原状回復費用が100万円であることから,実質は900万円である)は,甲ビル明渡しを停止条件とする破産債権である。したがって,Cは本件貸金債権による相殺とは別に,甲ビルの賃料9か月分を期限の利益を放棄して先払いし,その弁済額900万円分の寄託を請求できる(同法70条後段,前段)。しかし,70条の規律によって敷金返還請求権を回収できるのは,最後配当に関する除斥期間内までに停止条件が成就した場合であるところ(同法198条2項参照),本問停止条件の成就は平成30年の本件賃貸借契約終了後の明渡時であって,破産手続中に停止条件が成就することはほぼありえない。停止条件が不成就の場合,寄託はそのまま弁済として有効になるため,敷金返還請求権の回収にはならない。よって,相殺権行使による敷金返還請求権の回収はできない。

 以上より,破産手続においては,1200万円の手続外回収ができる。

⑵ 民事再生法の規律

ア 民事再生法においても,再生債権者が再生手続開始当時に再生債務者に対し債務を負担するとき、再生計画によらずに相殺権を行使できる(民再法92条1項)。ただし,相殺権の行使には制限がある。まず,金銭化,現在化の規定が存在せず,債権届出期間内に相殺適状を生じた債権債務に限って相殺ができる(同項)。次に,再生債権者が負担する債務が賃料債務である場合,期限の利益を放棄して相殺できる額は6か月分に限られる(同法92条2項)。さらに,再生債権者が敷金返還請求権を有している場合は,破産法70条のような弁済寄託ではなく,賃料の弁済額の限度で敷金返還請求権が共益債権となり,手続外優先弁済を受けることになる(同条3項,121条1項,同2項)。相殺と共益債権となる額との合計は,賃料の6か月分を超えることはない(同法92条3項かっこ書き)。本問における再生計画案の条項は,上記のような内容であると考えられる。

イ このように民事再生法において相殺権の行使が制限されている趣旨は,破産手続のような清算手続と異なり,民事再生手続は再生手続であって,手続中や手続終結後も事業継続が予定されているところにある。事業継続が予定されているから,手続内で全ての権利関係を清算する必要がなく(金銭化,現在化がなく,相殺適状期間が限られている),また,事業継続のために資金を必要とするのである(賃料の相殺による前払いを制限し,本旨弁済を行わせ,敷金返還請求権は別途共益債権とする)。

ウ 本問において,Cの有する賃借権が解除されず,かつ抵当権者Dにも対抗できるのは破産手続の場合と同様である(民再法51条,破産法56条1項)。

 本件貸金債権1200万円について,Aは再生手続開始時未だ期限の利益を喪失していない。したがって,本件貸金債権はCA間の当初の契約通り,毎月末日に50万円ずつ弁済期が到来する。Cは,債権届出期間の満了前までに相殺適状を生じた部分しか相殺できない。本件再生手続における債権届出期間満了時は平成23年4月15日で,再生手続開始決定は同年3月14日であるから,本件貸金債権の弁済期は,同年3月31日に50万円分のみ到来し,賃料債権と相殺適状を生じる。よって,Cは,本件貸金債権のうち50万円分のみ,賃料債権との相殺により回収ができる(民再法92条1項)。

 本件敷金返還請求権について,Cは賃料6か月分,すなわち600万円分の賃料を期限の利益を放棄して先払いすれば,その分の敷金返還請求権が共益債権となり,再生計画によらずに優先弁済を受け得,回収することができる。ただし,本件貸金債権との相殺分50万円と合わせて600万円を超えることはできない(同条3項かっこ書き)ため,Cが回収できるのは650万円ではなく,600万円にとどまる。

⑶ 以上検討した通り,Cは,再生手続によれば600万円を手続外で回収できるが,破産手続によれば1200万円を手続外で回収できることになるため,破産手続の方が有利だと考えたといえる。

 

第2 設問2

1. Aの提出した再生計画案(以下,「本件再生計画案」という。)を裁判所が認可すべきかどうかは,民再法174条2項各号事由の有無により決定される(同法1項,2項柱書)。以下,本問において各号事由が存在するか,検討する。

2.⑴ 1号事由

 B,F,Gはそれぞれ債権届出期間内に債権の届出を行っているし,その他本件再生手続に法律違反は特に存在しない。また,再生計画案に法律違反がある事情も存しない。よって,1号事由は存しない。

⑵ 2号事由

 「遂行される見込みがない」(同法174条2項2号)とは,資金調達計画がずさん等の理由で再生計画に基づく弁済が行われないと見込まれる場合を指すところ,本問,Aはスポンサー企業から融資を受けることになっており,「遂行される見込みがない」とまではいえない。よって,2号事由も存しない。

⑶ 4号事由

 「再生債権者の一般の利益に反するとき」(同項4号)とは,再生計画案に従った弁済率が,予想清算配当率を下回る場合をいう。本問における予想清算配当率は1パーセント未満であるのに対し,本件再生計画案の弁済率は3パーセントと,予想清算配当率を上回っている。よって,「再生債権者の一般の利益に反する」とはいえず,4号事由も存しない。

⑷ 3号事由

 一番問題になるのが,BによるEからの債権譲受け,FGへの分割譲渡,その後の本件再生計画案可決が,「不正の方法によって成立するに至った」(同項3号)に当たるかである。

 「不正の方法によって成立するに至った」とは,本来であれば否決されるはずの再生計画案が,法律上又は信義則上許されない行為によって可決されるに至ったことを指すと解する。

 本問,再生手続開始決定後に,再生計画の可決が危ぶまれたことを知ったBは,E銀行の有する多額の貸金債権(少なくとも5億2200万円以上)を,回収可能性が極めて低いにも関わらず実価を超える価額で譲受け,Aへの保証債務履行請求権を取得,それをF及びGに分割譲渡した。その結果,本件再生計画案は,人数要件(民再法172条の3第1項1号。議決権者はC,D,B,F,Gの5名であり,B,F,Gが賛成した。),議決権要件(同項2号。B,F,Gの有する債権額の総額が,C,Dの有する債権額以上であった。)を共に満たし,可決されたのである(同条1項柱書)。Bがかかる行為をしなければ,議決権者はC,D,Eの3名で,C,Dは少なくとも反対したのであるから,本件再生計画案は人数要件を欠いて否決されたはずであった。

 BはAの代表者であって,Aと実質的に同視することができる。Bの行為は,まず再生債権者の一人であるEに対し,実価を超える価額で債権を譲り受け,Eにのみ優先的な満足を得させた点で,債権者間の公平を害する法律上許されない行為である(同法38条2項違反)。また,Bが取得した債権をF,Gに分割譲渡した行為については,B,F,G全て親族かつ再生債務者Aの取締役であるから,実質的にみると,再生債権者は増えていない。分割譲渡行為は,可決要件たる人数要件を満たすためだけに行われた仮装行為といえ,信義則上許されない行為であると評価できる。

 以上,B,F,Gの一連の行為は,まさに法律上又は信義則上許されない行為といえ,その行為によって本件再生計画案が可決されたといえるから,「不正の方法によって成立するに至った」といえる。よって,3号事由が存在する。

3. 以上より,本件再生計画案は民再法174条2項3号に該当するため,裁判所は,本件再生計画について,不認可決定をすべきである。