これで、160点(席次1~3番ですが、おそらく3番だと思います)でした。ちなみに、総合は7番、論文だけだと6番でした。

 まだ出題趣旨、採点実感が出ていない段階での公表には不安も覚えますが、公法が一番成績が良かったので、これだけ公表しようと思った次第です。皆様のお役に立てれば幸いです。 無断転載は避けていただけると助かります。何かある際は、ご一報くださればと思います。
(改行1行が2行分に表示されるようです。すみません。)







公法系科目第1

 

 設問1

1.本条例(2条、4条1号、同3号を中心とした本条例全体)は、C社の「自然保護地域でタクシー事業を行う自由」を侵害しており、憲法22条1項に違反し、違憲無効であるから、本件不許可処分は根拠を欠いて違法、取り消されるべきである、との主張を行う。

2.⑴ 職業の自由(憲法22条1項)は、個人が自己の生活のかてを得るための手段であると同時に、職業を通じて個人の個性を発揮し、個人の人格的価値と不可分に結びつくものとして、憲法22条1項により保障されている。この趣旨を全うするために、憲法22条1項は、狭義の職業選択の自由のみならず、広義の職業の自由(営業の自由)までも保障していると解するべきである。

 C社のタクシー事業は、まさに狭義の職業であって、C社の「自然保護地域でタクシー事業を行う自由」は、狭義の職業選択の自由として、憲法22条1項により保障される。

⑵ 職業の自由が、前述の通り個人の人格的価値と不可分に結びついている以上、職業の自由を制約する本条例の憲法適合性は、厳しく審査されねばならない。

 C社は、自然保護地域でそもそもタクシー事業を行えなくなっており、本条例は、C社の狭義の職業選択の自由を制約している。本条例は許可制をとっており、事前規制である。事前規制は、職業の自由に対する強度の制約であり、人格的利益へのき損が大きい。また、本条例の規制目的は、タクシー運転者による交通事故を防ぎ、もって人の生命身体の安全をはかるという警察・消極目的であって、防ごうとする弊害を裁判所が客観的に審査することが可能であるから、司法審査になじむ。本条例の規制が以上のように強度かつ消極目的で、C社の制約されている自由は核心的なものであることに照らせば、本条例は、規制目的が重要で、かつ目的達成手段が必要かつ合理的な最小限度のものである場合にのみ、合憲となると解するべきである。この場合の審査は、各許可条件ごとに行われなければならない。

⑶ア まず規制目的は、本条例1条にてらせば、①タクシーによる輸送の安全を確保することによって、自然保護地域における交通事故を減らし、人の生命身体の安全を図ること②排気ガスが少ない等自然環境に配慮した自動車のみを許可することによって自然保護地域の豊かな自然を保護すること③①②をもって観光客を増やし、B市の観光振興を図ることである。

 このうち、①は重要な利益であると認めることができる。しかし、②は単なる公益目的であって、個人の人格的価値と不可分に結びつく職業の自由を規制するための利益としては足りず、重要とはいえない。③も、結局B市内の観光業を営む既得利益を保護するものであって、そのような特定利益は憲法上の職業の自由を制約する重要な利益たり得ない。

 よって、①の目的以外は重要とはいえない。

イ 目的がたとえ重要だとしても、規制手段は必要かつ合理的とはいえない。

 本条例4条1号柱書、同イ、ロについて。電気自動車であれば自然環境に配慮しているといえ、②目的に資する。また、エアバッグやAEDがあれば、交通事故が発生しても人的被害を最小限に抑えられるから、①に資するといえ、合理的とはいえる。しかし、電気自動車だけではなく、ハイブリッド車であっても自然環境に配慮しているといえるため、②の目的を達成するための規制手段としては、電気自動車に限っている点で必要性が認められない。

 4条2号について。5年以上継続して営業所を有していれば、B市になれているといえそうであり、①に資するとも思える。しかし、B市内に継続して営業所を有していることと、交通事故が減少することとの間の関連性について何ら立法事実がなく、目的適合性を欠いている。よって、合理的な手段ではない。

 4条3号イについて。自然保護地域の道路状況や自然環境について熟知していれば、交通事故は減少するし、自然環境への配慮もあるといえ、①②に資する。よって合理的とはいえる。B市の実施する試験内容が必要最小限度を超えていれば、必要性を欠く手段となる。

 同ロ、ハについても。4条2号と同じく、年数と交通事故の減少との関連性を示す立法事実がないため、合理的な手段とはいえない。

 以上より、本条例の規制手段は合理性を欠くか、必要性を欠いており、合理的かつ必要的な最小限度の手段とはいえない。

⑷ よって、本条例は憲法22条1項に反して違憲無効であるから、C社への不許可処分は違法取り消されるべきである。

 

 設問2

1.⑴ C社はA県においてはタクシー事業を行うことができるのであって、自然保護地域はあくまで一つの営業場所に過ぎないから、C社の主張する「自然保護地域でタクシー事業を行う自由」は、狭義の職業の自由ではなく、営業の自由にとどまる、との被告側反論が想定される。

⑵ 確かに、狭義の職業の自由に比べ、営業の自由は、職業自体は遂行できている点で、自由が制約された際の人格的利益のき損の程度は低いといえる。しかし、A県において、B市の自然保護地域は一大観光地であって、自然保護地域でタクシー事業が行えないとすれば、最大の利益が失われることになる。職業は元々生活のかてを得る手段であり、C社は営利企業であることを考えれば、最大の利益を見込める自然保護地域でタクシー事業が出来ないことは、そもそもA県でタクシー事業を行うことを断念させかねない制約であるといえるから、実質的にみて狭義の職業の自由そのものへの制約と同視できる。よって、被告反論は妥当でない。

2.⑴ 本条例は既存のタクシー事業者が過剰な競争にさらされて過酷な運転業務を強いられることを防ぎ、事業者の健全な発達を守るための規制であって、社会経済的な観点からの規制といえ、積極目的規制である。このような積極目的規制は、様々な利益を考慮する必要があり、立法府の議論に委ねられるべきものであるから、立法裁量を尊重すべきであって、厳格な審査は妥当ではない。また、本条例の許可条件は、全て自分の努力で達成できる主観的条件に過ぎない。自分の努力では達成できない客観的条件による許可制と異なり、主観的条件による許可制は、努力により達成できる条件であるから、人格的利益へのき損の度合いが客観的条件に比べて低く、規制強度は低いといえる。よって、緩やかに審査すべきであり、規制目的が正当で、規制手段が目的達成と合理的関連性を有してさえいれば合憲である。以上のような被告側反論が想定される。

⑵ 本条例は、交通事故を減らし、人の生命身体の安全をはかる消極目的から、既存事業者の利益を守る積極目的、自然環境を保護する公益目的まで、様々な目的が複合的に規定されている。このような複合目的の規制を消極目的、積極目的と二分して考えるのは妥当ではなく、許可条件ごとに、規制の強度等を見て審査基準を考えるべきである。

 そして、本条例4条1号、同3号イ、ハは主観的条件といえる。しかし、4条2号、同3号ロは年数要件であり、今現在のC社の努力によっては絶対に達成することができない条件といえ、客観的条件といえる。

 以上、本条例が制約しているC社の自由が狭義の職業の自由であることにも照らすと、主観的許可条件については、規制目的が正当で、規制手段が目的達成のために合理的な手段といえれば合憲であり、客観的許可条件については、規制目的が重要といえ、規制手段が目的達成手段として必要かつ合理的といえて初めて合憲であると解するべきである。

3.⑴4条1号、同3号イ、ハについて

ア 規制目的は、前述(設問1、2.⑶ア)の通りであるが、①は人の生命身体の安全を図る目的として、当然に正当といえる。②の自然保護も、公益目的として正当な目的である。③についても、B市の住民の経済的利益となるし、B市の財政に資するため、正当な目的といえる。

イ 手段について、電気自動車は排気ガスが少ない等、通常の自動車より自然環境に配慮した自動車であって、電気自動車を要件(4条1号柱書)とすれば、自然保護地域の環境は保全されるといえるため、②に資する。また、エアバッグやAEDの搭載を義務付ける(同1号イ、ロ)ことによって、交通事故が起きた時の人的被害を最小限度に抑えられるといえるので、①に資する。よって、本条例4条1号は、目的達成のために合理的な手段といえる。

 自然保護地域は道路が狭く、曲がりくねっているために、そのことを熟知した運転者であれば、交通事故は減るといえる。自然環境について熟知していれば、配慮した行動を期待できる。また、B市自身の実施する試験によって熟知の度合いを図ることも十分に合理的といえる。よって、4条3号イは目的①②に資する、合理的な手段である。

 交通事故を10年間起こしたことがなければ、今後も交通事故を起こす可能性は低い運転者であるということがいえるから、①に資するといえ、合理的手段である。

ウ 以上より、本条例4条1号、同3号イ、ハは、正当な目的のために合理的な手段といえるため、合憲である。

⑵ 4条2号、同3号ロについて

ア 人の生命身体の安全は、重要な利益であるから、目的①は重要な目的といえる。また、②は自然環境という公益目的ではあるが、生活環境利益、景観利益も、個人の人格的価値と結びつきうる利益であって、このような公益であっても、職業の自由を制約するに重要な利益であるというべきである。よって、②も重要な目的である。③についても、観光振興によって、B市の財政が潤うし、ひいてはB市住民全体の経済的利益となるのであるから、重要な目的といえる。

イ 4条2号、同3号ロについて。経済的自由の規制立法の場合、立法事実は、必ずしも厳密なものを要さず、ある程度の関連性があれば足りるというべきである。B市内で継続して営業所を有し、10年以上タクシー運転手を経験していれば、B市の道路や環境についてある程度熟知するということができ、交通事故の減少や、自然環境への配慮につながるといえる。よって、①②との関係で合理的といえる。ただ、合理性はあるといっても、5年や10年といった年数要件を課すことが必要最小限といえる立法事実は存在せず、やはり、年数要件は必要な条件と言うことはできない。

ウ よって、4条2号、同3号ロは必要性を欠いた手段といえ、違憲である。

⑶ 以上より、本条例の4条1号、同3号イハは合憲であるが、4条2号、同3号ロは違憲無効である。

4.⑴ 本条例の年数要件が違憲無効だとしても、C社はD社の電気自動車を購入しておらず、4条1号柱書要件を満たさないために、許可処分を受けることはできない。

⑵ しかし、本条例が職業の自由を制約する立法であり、かつ、4条1号柱書はB市自然保護地域の自然環境を保護するために、環境に配慮した自動車を要件とするところに趣旨があることを考えれば、4条1号柱書の「電気自動車」とは、電気自動車と同じ性能を持ったハイブリッド車をも含む、と憲法適合解釈すべきである。

⑶ C社はハイブリッド車を購入しているため、本条例の要件は満たしているといえる。よって、本件不許可処分は法の根拠を欠くため、取り消されるべきである。





公法系第2

 

 設問1

1.本件要綱の法的性質

⑴ 本件要綱が採石法(以下、「法」という。)33条にいう採石認可処分の要件となっていれば、B県知事は本件要綱違反を理由に採石認可拒否処分をなしうる。一方、本件要綱の内容が採石認可処分の要件でなければ、そもそも拒否処分はなしえないとも思えるため、まず、本件要綱が採石認可処分の要件となっているか、つまり、本件要綱を定めることが、認可権者たるB県知事の裁量の範囲内かどうかが問題となる。

⑵ア 法33条の認可について、これはいわゆる許可制であって、許可制は、元々自由であった活動を制限するものであるから、許可権者の裁量は狭く解するべきであり、法に明示的に定めがない本件要綱までを認可要件とすることはB県知事の裁量の範囲内ではない、よって、本件要綱は解釈基準であるから、本件要綱違反を理由として認可拒否処分はなしえない、との反論が想定される。

 しかし、認可の対象となっている採石業は、岩石資源を採取する事業であるが、岩石は行政の有する土地上にあるものも含むから完全に無主物とまでは言いきれないところもあり、採石業が完全に自由な職業とはいい難い。また、採石業は災害を発生させる危険性を内在させており、行政による規制に服する必要性が高い事業である(法は「岩石の採取に伴う災害を防止し」、かつ「事業の健全な発達を図る」ことによって、「公共の福祉の増進に寄与する」ことを目的として定めている(法1条)のも、その表れである)。認可基準については、「公共の福祉に反すると認めるとき」と要件裁量を広く定める一方で、効果裁量については、「同条の認可をしてはならない」と裁量を認めない書きぶりとなっており(法33条の4)、認可をしない方向での認可権者の裁量を広く認めているといえる。これらの規定を考えれば、法33条の定める認可処分は、むしろいわゆる特許の性質をも有するものと解すべきである。この解釈は、法33条が一般的に認可制を定めたあと、認可の条件を附することができることを定め(法33条の7)、認可の取り消し(法33条の12)、採石業の停止を含む緊急措置命令(法33条の13)を置いて、それを罰則によって担保させていること(法43条2号、同3号)など、認可処分の効果を制限する方向の規定が多数置かれていることからも、支持することができる。

 したがって、法33条の認可処分に際しては、認可権者であるB県知事の広い裁量が認められる。認可権者は、法の目的を達成するために合理的といえる範囲内であれば、裁量基準として、認可要件を定めることもできるというべきである。

イ 本件要綱は、「災害の防止のための方法」(法33条の2第4号)として、「跡地防災措置」を定めている(本件要綱7条1項)が、掘削面の緑地化を含む跡地防災措置は採石に伴う災害防止に効果的といえるため、跡地防災措置を定めることは合理的であって、もとよりB県知事の裁量の範囲内といえる。そして、この跡地防災措置には多額の被用がかかる一方で、採石事業者は小規模事業者の比率が高いために、採石事業者のみに跡地防災措置を義務付けても、その履行が確実に行われるとは限らない(実際にB県では、事業者に任せると適切な履行がなされない例が多かった)。よって、採石認可の申請の際、採石事業者の事業協同組合であるC組合の保証を義務付けること(本件要綱7条1項、同2項)は、跡地防災措置の履行を確実とし、かつその費用を広く事業者全体の負担とする点で、履行確保のための合理的な方法といえる。

⑶ 以上より、「災害の防止のための方法」(法33条の2第4号)の内容として、跡地防災措置を定め、かつC組合の保証を求めることはB県知事の裁量の範囲内といえるため、本件要綱の内容は、法33条の認可の要件に含まれ、B県知事は本件要綱違反を理由として採石認可拒否処分をなしうる。

2.本件要綱の法的効果

⑴ では、本件要綱が裁量基準として認可要件に含まれるとして、B県知事はAに対し、本件要綱違反を理由として採石認可拒否処分を適法にできるか。

⑵ア 裁量基準が定められている場合、その基準は処分要件の内容をなしているから、裁量基準違反を理由とした拒否処分はできるのが原則である。

 ただ例外的に、具体的な状況の下において、予め定められた裁量基準を機械的に適用した結果、著しく妥当性を欠くことになる場合は、行政庁に個別的考慮義務が発生し、その義務に違反して拒否処分をなしたことが裁量の逸脱、濫用と評価されるとき、拒否処分は違法となる。

イ 本問、Aが採石許可申請の際にC組合から保証を受けていなかった場合、本件要綱7条1項違反となる。ただ、Aは、B県の採石業者の中では突出して資本金の額や事業規模が大きく経営状況の良好な会社であって、A自身でも跡地防災措置を十分になしうる資力を備えているから、本件要綱を定めた趣旨が当たらず、履行確保のためにC組合の保証を受ける必要がないとも思える。

 しかし、Aは大規模とはいえ、大企業とまではいえず、確実に跡地防災措置が履行されるほどの資力を有するとは言い切れない。また、採石認可に際してC組合の保証を受けることとした趣旨は資力確保だけではなく、資力があっても履行しないことを防ぐことにもあるところ、Aが自主的に跡地防災措置を適切に履行するとは言い切れず、ここにもC組合の保証を要する必要性がある。さらに、C組合に保証させることによってAに生じる損害は、C組合に支払う「割高な」「保証料」のみであって、Aへの損害は大きいものとはいえない。

 よって、本件要綱をAに適用した結果が著しく妥当性を欠くことになるとまでは言えず、B県知事がAに対し採石認可拒否処分をなしても、裁量の逸脱、濫用があるとまでは言えない。

⑶ 以上より、B県知事は、Aに対し、C組合から保証を受けていないことを理由として、適法に採石認可拒否処分ができる。

 設問2

1.B県知事がAの岩石採取をやめさせるための処分としては、①本件認可の撤回②認可の取消し又は停止(法33条の12第2号、同4号)③緊急停止命令(法33条の13第1項)が考えられる。以下、検討する。

2.①について

認可要件であった本件保証契約が認可後に解除され、事後的に要件を満たさなくなったことを理由として認可処分を撤回することがそもそも明文なくできるかがまず問題となるも、できると解する。法律による行政の原理に従えば、行政処分は法律に適合しなければならないし、元々処分の根拠法令に処分を撤回する権限まで含まれていたと解することが可能だからである。

ただ、授益的処分を無制限に撤回できるとすると、行政庁の処分を信頼した私人の利益が害されるため、授益的処分の撤回は、撤回することによって得られる公益と、撤回によって失われる私人の利益とを比較衡量し、失われる私益が公益を上回る場合には、認められないと解する。

本件認可を撤回した場合に得られる公益は、今後は本件要綱は一層守られるであろう、という将来の公益である。一方、本件認可を撤回すると、AB県において一時的とはいえ採石業をなしえなくなり、その分の営業利益を失う。Aは採石業者であるから、採石業自体ができなくなることは営利企業たるAにとって大きな損害である。また、Aへの採石認可を撤回してしまえば、跡地防災措置を履行する主体もいなくなるのであって、撤回しても災害の危険は(増加こそしないが)減少せず、得られる公益に比して失われる私益の方が大きいといえる。

よって、B県知事は①本件認可の撤回をなしえず、この方法ではAの岩石採取をやめさせることができない。

3.②について

⑴ 法33条の12第2号

 B県知事は、採石業者が採取計画(法33条、33条の2、33条の3第3号)に違反した場合、認可取消し又は岩石採取停止命令を出すことができる(法33条の12第2号、33条の8)。ただ、跡地防災保証については法令上採取計画上の定めとはされていないため、C組合の保証を受けなかったこと(本件要綱違反)が、採取計画に反した(法33条の8違反)といえるかどうかが問題となる。

 しかし、C組合の保証を受けること自体は認可要件であり(設問11.参照)、その保証書は、採取計画と共に提出しなければならないとされている「書類」である(法33条の2、採石法施行規則8条の15第2項11号、本件要綱8条1号)。C組合の保証が、採石計画内容たる跡地防災措置(法33条の2第4号)を確実に履行させるために必要とされていることにてらせば、C組合の保証は採取計画と密接不可分として一体であり、C組合の保証も、採石計画の内容をなしていると解すべきである。

 以上より、Aによる本件保証契約の解除は、C組合からの保証を無くすものとして、採石計画違反を構成し、法33条の8違反となる。よって、B県知事は、Aに対し、岩石採取停止命令を出すことができる(法33条の12第2号)。

⑵ 法33条の12第4号

 「不正の手段により」「認可を受けた」とは、本来であれば認可を受けることができなかったのに、信義則に反するような行為によって認可を受けたことをいう。

 本問、元々C組合の保証がなければ、Aは本件認可を受けることができなかった。Aは本件保証契約を締結して本件認可を得たが、Aは当初からC組合との本件保証契約を継続する意思はなく、本件保証契約は、B県知事を欺き、本来得られないはずの認可処分をなさしめるために締結されたものであった。このようなAの行為は、B県知事を欺く点で信義則に反するような行為といえ、「不正の手段」に当たり、Aは不正の手段によって本件認可を得たといえる。

 よって、B県知事は、Aに対し、岩石採取停止命令を出すことができる(法33条の12第4号)。

4.③について

 AC組合との本件保証契約を解除しているが、Aによる岩石採取の現状がこれによって直ちに変わるものではなく、岩石採取に伴う災害発生の危険が本件保証契約解除によって新たに生じるものではない。よって、「緊急の必要がある」とはいえず、B県知事はAに対し、岩石採取停止命令を下すことはできない(法33条の13第1項)。

 Aは、前述の通り法33条の8に違反しているが、法33条の13第2項によってB県知事がなしうるのは「災害の防止のための必要な措置をとるべきこと」を命令するだけであり、岩石採取をやめさせることはできない。よって、法33条の13によっては、Aの岩石採取をやめさせることはできない。

 設問3

1.Dが提起する抗告訴訟として、B県知事がAに対し岩石採取停止命令を下す(法33条の12柱書)べきことを義務付ける義務付けの訴え(行訴法3条6項1号)が考えられる。

2.義務付けの訴えの訴訟要件は、ⅰ義務付け対象が「処分」であること(同法3条6項1号、同2項)ⅱDに原告適格が認められること(同法37条の2第3項、同4項、9条2項)ⅲ「重大な損害を生ずるおそれ」があること(同法37条の2第1項、同2項)ⅳ「他に適当な方法がない」こと(補充性。同法37条の2第1項)である。以下それぞれにつき検討する。

3.ⅰについて

 「処分」(行訴法3条6項1号、同2項)とは、公権力の主体たる国または公共団体の行為のうち、その行為によって直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

 本問、義務付けの対象となっている岩石採取停止命令(法33条の12柱書)は、Aに対し直接に岩石を採取できなくするという法的効果を発生させ、違反に対し罰則を受けるべき地位に立たせる行為(法43条2号)であるので、上記「処分」に当たる。

4.ⅱについて

 義務付けの訴えの原告適格は、「法律上の利益を有する者」に限って認められる(行訴法37条の2第3項)。「法律上の利益を有する者」とは、当該処分がなされないことにより自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は侵害されるおそれのある者をいい、法律上保護された利益といえるか否かは、当該処分の根拠法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般公益に吸収解消させるにとどめず、これを個々人の個別的利益として保護していると解釈できるときに、認められる。この判断の際は、行訴法9条2項に従って判断する(同法37条の2第4項)。

 Dは、所有する森林が土砂災害によって被害を受けないという利益を有している。法33条の12は、2号において採取計画の遵守を定めており(法33条の8)、採取計画には岩石の採取に伴う災害防止方法を定めることが要求されている(法33条の2第4号)。この規定からすれば、法は、採石業者の岩石採取によって災害が生じた場合、その災害によって被害を受けるべき者の生命、身体、財産権も保護しているといえる。

 そして、財産権も憲法上の基本権の一つであって個人の人格的価値と不可分であること(憲法29条1項)、法も災害の被害について特に限定していないことからして、岩石採取に伴う災害によって、財産権に重大な損害を被る場合は、法は、その財産権まで個々人の個別的利益として保護していると解することができる。

 本問、B県知事がAに対して岩石採取停止命令を下さず、結果土砂災害が生じた場合、本件採取場から下方わずか10メートルの位置にあるD所有の森林は、土砂によって甚大な被害を受けること確実であって、Dは、その財産権に重大な損害を被るおそれがあるといえる。よって、Dは「法律上の利益を有する者」といえ、原告適格は認められる。

5.ⅲについて

 「重大な損害を生ずるおそれがあ」るとは、行政庁が処分を維持する必要性を上回るほどの損害が生じる蓋然性がある場合をいい、行訴法37条の2第2項に従って判断される。

 本件採取場からの土砂災害によってD所有の森林が被害を受けた場合、森林は土砂でおおわれることとなり、森林上の木々が破壊されるほか、森林に堆積した土砂を除去することは大変に困難であるといえ、この生じるであろう損害は回復がほぼ不可能なものであるといえる。また、土砂災害はD所有の森林にとどまらず、第三者にも広く被害を及ぼす危険がある。このような危険を考えれば、土砂災害による損害は、B県知事がAへの採石認可を維持する必要性を優に上回る損害といえ、「重大な損害」といえる。

 よって、ⅲは認められる。

6.ⅳについて

 「他に適当な方法がないとき」(補充性)は、処分の根拠法上に別の手段が用意されていない場合を指し、民事訴訟法上の救済は考慮に入れない。

 本問、設問2で検討したように、Aの岩石採取をやめさせる方法は法33条の12に定める停止命令しかないため、「他に適当な方法がない」といえ、補充性は認められる。

 よって、ⅳも認められる。

7.以上より、Dは義務付けの訴えを適法に提起することができる。