【演習書】

刑事訴訟法は、試験問題がとても長く、処理能力が試されます。しっかりと演習を積むべき科目だと思います。


『演習刑事訴訟法』を追記しました(5月10日)。
「刑訴ガール」がついに公開されましたので、追記しました!(6月2日)
緑『刑事訴訟法入門』を追記しました(9月13日)。
刑事訴訟法の争点[第4版]の改訂情報を追記しました(2月13日)。
『事例研究刑事法Ⅱ』を追記し、判例集と記事を分けました(7月14日)。
古江2版を追記しました(4月18日)。


古江頼隆『事例演習 刑事訴訟法』[第2版]



事例演習刑事訴訟法 第2版 (法学教室ライブラリィ)

評価:★★★★
一言:「演習書」というより「解説書」

感想
→ 学生のシェア率はとても高い…気がします。実務も経験された、古江教授の手による演習書です。法学教室の巻末「演習」欄の連載をまとめたもの。本書も、下 記『演習刑事訴訟法』も、「演習」のまとめですが、こうやってみると「演習」はかなり「使える」ものも多いですね。他にもいくつか有名な「演習」がありま すが、気になる人は検索してみるといかがでしょうか。

 重要論点についてまず典型的なケースを提示した上で、「学生」A,Bと「教員」の三人が議論し、その論点についての理解を深めていくという構成になっています。宍戸『憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ ) 』と異なり、本書に登場する「学生」はとても優秀です(笑)。絶対タダモノじゃない。
 ケースが典型例であるので論点の所在を理解するのには良いですが、これを使って事案解決を練習する、というものではないような気がします。演習書としての側面は弱いかなあという印象。

 本書の素晴らしさは、各重要論点についてとても平易な言葉で、最新学説(東大・京大系が主)の深い理解を提供してくれるところです。著者は実務家経験者ですが、決して判例実務一辺倒な解説ではありません(というかむしろ学説バリバリ)。本ブログの記事でも紹介した、緑『刑事訴訟法入門 (法セミLAW CLASSシリーズ) 』の発展、といったところ。

 ゆえに、初学者が安易に手を出すのはあまりお勧めしません。一通り刑事訴訟法を理解した中級者以上が読むと、目から鱗が落ちるような体験ができるのではないでしょうか。初学者は上記緑『刑事訴訟法入門』をおすすめします。入門も、とてもとても良い本です。

  本書はまた、「必読文献」ともいえるような重要文献を各論点について紹介してくれており(百選・争点・法学教室など学生がアクセスしやすい論文が中心なの も嬉しい)、本書を読み、本書に引用されている論文を読み、順々にレベルアップしていく、といった使い方が出来るのも◎です。そのような意味で「ブック (ペーパー)ガイド」の側面も強いかなと思います。

 是非、まずはつまみ食いしてみることをおすすめします。


緑大輔『刑事訴訟法入門』



刑事訴訟法入門 (法セミLAW CLASSシリーズ)

評価:★★★★
一言:初級から中級へのステップアップ

感想
→入門編の記事でも紹介しましたが、ここでも紹介。法学セミナー誌上で平成25年度司法試験の解説を担当されるなど、最近たくさん活躍していらっしゃる緑先生の手による論点解説本です。

 詳しいことは入門編に書きましたので、ここでは軽く紹介するにとどめます。冒頭に論点が提示され、それの「資料」として歴史的な文献が掲げられ、その後で緑先生による丁寧な解説がなされる、という形式。
 この解説が司法試験を意識したものになっており、大変わかりやすいかつ答案に反映しやすいので、とても「使える」本だと思います。

 若干緑先生の独自色が垣間見えるところもありますが、それを差し引いても素晴らしい本だと言えます。古江演習が肌に合わない人や、難しすぎてわからない人は是非、本書を読んでみて下さい。個人的には、古江演習か緑入門、どちらかは持っておいて良い本だと思っています。









長沼範良・大澤裕・酒巻匡・佐藤隆之・田中開『演習刑事訴訟法』(法学教室Library)


習刑事訴訟法 (法学教室Library)

評価:★★★
一言:論点解説集・網羅的

感想→法学教室の「演習」欄をまとめた一冊。2005年初版が発売されて以降改版されておらず、かつ上記古江『事例演習』が出版されたこともあり、埋もれてしまった感のある少しかわいそうな本ですね(笑)。

 内容としては、刑事訴訟法の全分野につき、短い【設問】、【ポイント】として問題の所在が語られたのち、【解説】として若干短めの解説がなされて、最後に参考文献が掲載されています。オーソドックスな演習書です。
 問題数は全部で85問(!)もあり、全部に目を通すのはなかなか骨が折れそうです。ただ、執筆陣がとても豪華であり、解説の内容は大変素晴らしいと思います。思考の流れが大変わかりやすく、言葉遣いも相まって答案にそのまま使える解説です。

  古江『事例演習』が各学説を解説し、妥当と考えられる方向性を示しているのに対し、本書は担当者の意見が丁寧に解説されています。(必ずしも判例の結論と 合致するわけではありませんが)各論点について、担当者による一つの明晰な答えが書いてある、という点が本書の良さだと思います。
 もう一つ、やはり設問数の多さが本書の良さとして挙げられると思います。古江『事例演習』よりも網羅的です。辞書として用いることも可能だと思います。
 後は、参考文献が充実していることが良いですね。多すぎず、各論点について読むべき文献を挙げてくれています。この点、古江『事例演習』と近いですね。

 2005年出版と少し古い感じもある本書ですが、内容は全く色あせておらず、今でも現役で十二分に活躍してくれると思います。古江演習か本書か、どちらか持っていればよいかなあ、という感じ。




井田良・田口守一・植村立郎・河村博[編]『事例研究 刑事法Ⅱ』



事例研究 刑事法 (2) 刑事訴訟法

評価:★★★★★
一言:「演習」書の定番

感想
→行政法で有名な、「事例研究」シリーズの刑事訴訟法版です。題名は「刑事法」ですが、「Ⅰ」が刑法、「Ⅱ」が刑事訴訟法となっており、内容的には完全に分かれています。

  本書の特徴として、執筆者が編者のお二方を除き、全員実務家(検察官もしくは刑事裁判官)であるということがあげられます。先に長めの事例が掲載され、その解説がなされます。
  事例問題の解説のあとに、「関連問題」「発展問題」として、事例問題よりは短いですが、十分検討に値する事例が掲載され、その解説がなされているのも特徴 です。問題数だけだと、本書は少なく見えますが(特に捜査法分野は4章しかない)、章末の「関連問題」「発展問題」を合わせると相当程度をカバーするよう になっています。


 内容に入りますが、素晴らしいの一言に尽きるかと思います。特に、編者以外の実務家執筆部分が素晴らしいです (編者執筆部分は少し受験から離れた内容ではないかと思います)。基礎的なところから実務的観点を加えつつ、しかし学生のレベルからは離れずに解説がなされています。

  長い事例問題を扱う演習書の良さは、事例問題中にちりばめられている事実を用いた「当てはめ」にあるわけですが、本書中で展開される「当てはめ」は、実際 に実務に携わっている方が書かれているだけあって、大変に説得的です。答案を書く際に、そして違法/適法の「相場観」をつかむために、非常に有用であるこ とは間違いないかと思います。
 参考文献もちょうど良いレベルに設定されており、本書から発展的な内容へとステップアップすることも可能でしょう。

 刑事訴訟法分野においては、「演習書」といいつつ、実際は「論点解説」本である本が多いわけですが(上の三冊はそうです)、本書は文句なしに「演習書」といえます。
 同じく「演習書」である下記『捜査法演習』は多少クセがあるのに比べ、本書は、事例問題のレベルが高く、かつ解説も変な「色」がないため、司法試験を見据えた演習を積むには最適といってよいのではないでしょうか。
 多少難解な部分もあり、初学者が手を出すにはハードルが高いかとは思いますが、本腰を入れて取り組むに足る素晴らしい演習書だと思います。





佐々木正輝・猪俣尚人『捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講』



捜査法演習 理論と実務の架橋のための15講

評価:★★★★
一言:ザ・捜査実務。硬質な解釈論と当てはめ

感想
→捜査法分野において、捜査(検察)実務を学ぶに当たって、本書ほど素晴らしい演習書は他にないのでは、と思えるほど良くできた一冊です(褒めすぎ)。著者お二人は検察官。

 本書は正統派(?)な「演習書」でして、各章の初めに判例を基にした、長文の事例問題が掲載されています。事例問題の中での主要論点につき、検察実務の立場からの解釈、当てはめが行われています。

  本書の凄さは、その解釈論の丁寧さと堅実さにあると思います。徹底的に実務説ですが、その理由づけは全て条文と確立した最高裁判例に求められており、かな りの説得力があります。引用文献も学説論文からコンメンタールまで多岐に及び、実務ではこのような文献が参照されているのか…という感想を抱きました。

 かなり詳細に解説がなされているため(捜査のみで一冊使っているのである種当然)、もちろん演習書として答案作成に使っても良いのですが、本書を辞書的に用いるのも良いでしょう。

  答案にすぐに使える!といった類の演習書ではないですが、捜査法についての深い理解を得るために是非。ただし、難しい箇所も多いので本腰を入れて取り組み ましょう(法律論も当てはめも、とても細かいです。きめ細やかな議論、というべきでしょう。難しいところは本当に難しいので、覚悟なされよ)。

 なお、本書の冒頭に著者お二人の対談が掲載されているのですが、そこで学生への批判(叱咤激励)が滔々と語られており、いきなり心を折られますのでご注意ください。

 そして、本書の姉妹書となる公判編がついに発売されました!執筆陣が豪華であり、これは期待できます。こちらは本書とは違い、そこまで深いことは書かれていないようです。


刑事公判法演習: 理論と実務の架橋のための15講



LEC『新・論文の森 刑事訴訟法』



司法試験予備試験 新・論文の森 刑事訴訟法

評価:★★
一言:答案のイメージをつかむために

感想

 論 文の森シリーズの良さは、コンパクトなサイズで持ち運びやすく、かつ収録問題はオリジナル25問+旧試(のことが多い「発展問題」)25問(+予備過去 問)と充実していることです。解説も必要十分。そして、参考解答が全部にあるので答案のイメージをつけることが可能です。個人的には、それが一番役に立ち ました。

 ただ、参考解答が良くも悪くも「予備校」然としているので(いちいち問題提起をし、若干冗長な言い回しを使う、判例の規範を不 完全に使っている、など。何よりも、当てはめが微妙なことが多いです)、そのまま真似するのは危険かも。全範囲を潰す、適度な長さの事例問題が沢山のって るのが良いところですね。

 本書の参考答案について「なんだこれは」と思えるようになったら卒業かなと思います。行政法と異なり、刑事訴訟法についてはとっつきやすい問題も多く、初学者でも大丈夫。




ronnor(@ahowota)「刑訴ガール」


http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20130602/1370158773


一言:「法学ガール」第4弾!

感想
→ronnor先生による「法学ガール」第2弾、司法試験本試験刑事訴訟法を小説形式で解説していく「刑訴ガール」が始まりました。
 『憲法ガール』が書籍化され、にわかに一部法学クラスタが色めきたっていますね。憲法ガールのことは憲法の記事に任せるとして、刑訴ガールについて。

 ronnor先生の前作「商法ガール」は、会社法の条文の趣旨から丁寧に解説を加え、かつ実務的な観点から試験範囲外の一歩進んだ視点まで提供してくれる素晴らしい作品でしたが、本「刑訴ガール」も負けず劣らず面白いつくりになっています。
 メインヒロインが刑事弁護人、サブヒロインが検察官の立場で、両極の立場から議論をぶつけ合う構造になっており、普段の静的な議論ではなく、「動的」な刑事訴訟法を感じることができると思います。

  たしかに、司法試験本試験は検察官に有利な問題ばかりですのでこの構造がどこまで維持できるか、ということについて若干の不安はありますが(笑)、 ronnor先生ならやってくれると信じています!(あと、メインヒロインの属性というかプロフィールが滅茶苦茶なのはご愛嬌、ということで笑)

 司法試験の解説がこうやって増えることは、大変良いことですね。演習本が増えると「二兎を追う者は一兎をも得ず」になりかねないですが、司法試験の解説であればそういうことは起こりにくいですから。
 この刑訴ガールは、「答案」にするには若干の工夫が必要だとは思いますが(相対立する議論をうまくまとめると答案になります)、問題を解き、出題趣旨と採点実感を読み込んだ後で刑訴ガールを読むと、また新しい視点を提供してくれると思います。