【判例集】

 会社法は最高裁判例がない箇所も多く、裁判例の重要性も高いです。東京地裁の見解が事実上の実務見解になっている、との話もあります。また、日々新しい判例が追加されている(この前会社分割と詐害行為取消に関する最高裁判例が出ましたね。最判平成24年10月12日です。)のも会社法の特徴です。是非、判例集は出来るだけ新しいものを使いましょう。


江頭憲治郎ほか『会社法判例百選』



会社法判例百選 第2版 (別冊ジュリスト(205号))

評価:★★★★
一言:必須

感想
→つい最近出ました。会社法判例百選の第2版です。重要な最高裁判例、高裁判例などをしっかりとカバーしており、解説もわかりやすいものが多く、個人的にはかなり使える百選のうちの一つです。まずは本書掲載判例をしっかりと潰していきましょう。


山下友信・神田秀樹 編『商法判例集』



商法判例集 第5版

評価:★★★☆
一言:一冊あれば安心?

感想
→会社法・手形法小切手法・商法(商法総則・商行為・商取引法)の全分野の判例が掲載されている判例集です。掲載判例数が多いのは勿論ですが、判例引用が長いのも特長です。やはり判例を正確に理解するには抜粋だと物足りないですし、有用でしょう。

 第5版は最近出版されたばかりです。本当に最近の判例が多く掲載されていて、会社法の世界は日進月歩だなと思いますね。とりあえず本書があれば判例に困ることは無いでしょう。保険法や金商法の判例も載っており、結構先まで使えるのではないでしょうか。



【演習書】
 
 会社法分野の演習書はなんというか、どれも素晴らしい出来でして目移りしてしまいます。実際目移りしてしまった結果、ここに三冊+α並んでいるわけですが…(笑)
 葉玉『新会社法100問』も演習書といえば演習書なのですが、毛色が違うので基本書の枠に押し込めておきました。

 基本的には、下記三冊のうちどれか一冊をやり込めば足りるのではないかなと思います。それに加えて、商法ガールを読み込めば怖いもの無し!でしょう。


黒沼悦郎・福島洋尚・松井秀征・行澤一人・中東正文『Law Practice 商法』



Law Practice 商法

評価:★★★★
一言:百選問題集・初学者にぴったり

感想
→Law Practiceシリーズの商法編です。Law Practiceシリーズは、学部と法科大学院とをつなぐ、自習用の演習書という位置づけで刊行されているシリーズですが、商法が一番出来が良いのではと思います。

 本書は会社法・手形法小切手法・商法総則・商行為の分野をカバーしており、基本的には百選判例を題材にした事例問題と、その解説という形で成り立っています。
 答案は載っていませんが、参考判例がそのまま答案になるように問題が作ってあり、参考答案がなくても決して不便には感じません。解説は概して通説・判例に徹し、オーソドックスなレベルに抑えてあります。非常に分かりやすかったです。

 同シリーズ民法は解説の執筆者が多数にのぼり、ゆえに解説ごとの質に著しい差があるというある種致命的な問題を抱えています。それに対し、本書は執筆者が5人に絞られているため、ある程度の質は保たれています。個人的には松井先生執筆部分がとても分かりやすかったです。

 問題ごとに参考判例、参考文献が載っており、初学者が次のレベルにステップアップするのに最適かと思います。また、本書を潰すことによって必然的に百選判例を潰せることになるのが一番良いですね。

 会社法が苦手だと思っている方は、下記演習書に手を出す前に、まず本書から始めてみてください。正直なところ、本書をしっかりと理解すれば下記演習書は不要なのではないかとも思っています(言い過ぎかもしれませんが)。



伊藤靖史・伊藤雄司・大杉謙一・斎藤真紀・田中亘・松井秀征『事例で考える会社法』



事例で考える会社法 (法学教室ライブラリィ)

評価:★★★★
一言:リークエ執筆陣による「演習書」兼「論文集」

感想
→法学教室連載の書籍化。新司法試験を意識した長文の事例問題が載っています。

 連載時にはなかったものとして、問題中の数問に「参考答案例」がくっついています。解説のあとに答案例が読めるので、答案のイメージがつくと共に理解が深まります。とても良い心配りだと思いました。

 事例問題が長文な上に、解説はかなり突っ込んだところまでなされているので、レベルは結構高いです。学説の最新の問題意識を反映した箇所も数多くあり、そのような部分はむしろ学術論文の色彩を強く持っています。
 脚注として挙げられている論文も本格的な論文が多く、参考文献まで手を広げればかなりの発展内容に踏み込むことになるでしょう。

 解説の冒頭には参考判例と代表的な基本書該当部分が明示されており、大変学習しやすいです。まずは論文まで手を伸ばさず、ここから潰していくのも手でしょう。

 リーガルクエストのコラム部分で示唆されていた内容を推し進めた感じの箇所もあり、リークエを使っている人には相性抜群だと思います。若干、斎藤先生執筆箇所が分かりにくかったかなあと思いますが。

 もう一歩先へ進むために、是非。



前田雅弘・北村雅史・州崎博史『会社法事例演習教材』



会社法事例演習教材 第2版

評価:★★★★
一言:最高レベルの問題集

感想
→京都大学の教授陣が作り上げた最強の問題集です。元ネタは法学教室に連載されていた北村先生の「演習」でしょうか。問題がずらっと載っており、解説はありません。ただ、演習問題として小さめの問題が章の間に挟まっており、その演習には解説がついています。この演習だけでも有用かと。

 問題のレベルは非常に高いと思います。前述の通り解説は無く、Questionとそれに対応する基本書の該当ページ(江頭会社法と龍田会社法が多い)が書いてあります。本書を解くのであれば、江頭会社法は必須ですね。本書の導きに従って、江頭会社法を読んでいく感じになると思います。

 『事例で考える会社法』が基礎知識を基に深く掘り下げていく問題が多いのに対し、本書は会社法に関する知識問題を網羅していく印象がありますね。少なくとも本書を理解すれば敵はいなくなると思います。当然、僕は本書を理解できていません(笑)。

 なにぶん解説が無いため、一人でやるのはいささか大変で、心が折れます。会社法が得意な人とゼミを組むと良いのだと思います。



ronnor「法学ガール商法編(商法ガール)」 


http://d.hatena.ne.jp/ronnor/20120515/1337088490


評価:★★★★
一言:素晴らしいの一言

感想
→ronnor先生(@ahowota)のブログ「アニメキャラが行列を作る法律相談所withアホヲタ元法学部生の日常」に掲載されていた、新司法試験民事系第2問商法の過去問解説です。

 同じコンセプトの解説としてbabel先生(@babel0101)の「憲法ガール」「行政法ガール」があります。(インテグリティな日々。

 小説形式で解説がなされており、とても読みやすいです。それに加え、条文の趣旨から丁寧に解きほぐされているので、驚くほど頭に入ってきます。出題趣旨、採点実感と共に本記事を読み込むことで深い理解にたどり着けるはずです。会社法施行規則、会社法計算規則まできちんと解説がなされており、まさに「至れり尽くせり」でした。

 基礎的な事項に解説の多くを割いているため、網羅性に欠ける箇所もありますが、そこは出題趣旨・採点実感(+上位答案)で補充すればよいので全く問題ありません。

 個人的に感動したのは、一通りの解説(司法試験の「答え」として求められているもの)が終了した後、「では、実務的にはどのように処理されるのか」が説明されているところです。現実の会社関係の法務においては、当然、会社法のみならず金融商品取引法などの法律が重要になってきますが、本記事はそのような法分野まで解説の手を広げ、「会社法プロパーだとこのような処理になるが、実際はここまで考えなければならない」ことを示しています。試験に直結するわけではありませんが、面白く、そしてためになりました。

 このような解説を無料で公開してくださっているronnor先生には感謝感激雨あられです。なお、先生のブログは商法ガール以外にも多数の書評が掲載されています。それがまた面白く、毎回つい複数の記事を読んでしまいます(笑)。
 先生のブログをご存じなかった方は、是非この機会に。知的刺激とユーモアに満ちあふれていて、素晴らしいブログです。僕もあんな文章が書けたらなあと思います。