(追記:以下は、「追記」を除いて、僕が東大ローの入試を受けたその日の夜に、東大構内の図書館のパソコンから書いた記事です。今読み返すと、文体や内容含め、恥ずかしさ満点な記事ではありますが、一つの記録として、そのまま公開しています。「追記」は、折に触れて書き加えたもので、追記2や3の方が新しくなっています。)

 基本書レビュは一旦置いておいて、入試レビュです!!

 今日、先程、東京大学法科大学院入学試験が終わりました。つかれたー!

 周りの人によると、どうも解答用紙の書式がちょこっとだけ変わった様子。ただ、30字×80行の字数制限は変わらず。ただ今まで「法律科目1」「法律科目2」「法律科目3」だけで試験の順番が分からなかったのが、今年から 「法律科目1〈刑事系〉」みたく内容が分かるようになってました。

 試験の間に結構休み時間があって、中々難しいペース配分を強いられました(笑)。


 では、恒例(?)の入試問題レビュしたいと思います。ネタバレ注意です。問題文は、適宜省略しています。問題文読んだらわかると思いますが、結構マジキチです(刑事系除く。)ので、東大は多分パニック耐性を見てるんでしょうね(笑)。と善意解釈しておきますが…


 


 法律科目問題 1 刑事系 (9:30~10:40)

1.Xが殺意をもってその妻Aの首を絞めつけたところ、Aは動かなくなった。XはAが死亡したものと思い、トランクに運び込んで山に向かった。その途中、Xは動揺のあまり、ガードレールに衝突事故を起こしてしまった。
 その後トランク内からAの死体が発見されたが、Aの死因がXに首を絞められたことによる窒息死か、その後の衝突事故の衝撃によるものか分からなかった。
 Xの罪責を論じなさい。


 去年・一昨年と各論の問題が続いていたのですが、今年は総論の問題でした。東大は(多分慶応もですが)刑事系の問題がものすごく素直なんですよね。期末試験でもでねーよレベル。今年も例に漏れず、といったところでしょうか。

 こう見るとすごく単純な事案ですねー…ただ、ちょっと考え込んでしまいました。主観は死体遺棄で客観は…とか過失致死?とか…笑 結局僕はXの衝突事故を行為後の介在事情として、Xによる殺人の実行行為とA死亡結果との間の因果関係の問題に落とし込みましたが…当てはめを長く書きすぎてその後の因果関係の錯誤がちょこっとしか触れられなかったのが残念です。 どうなんでしょ。

(追記:その後ちょっと考えて思ったのですが、この問題については多分、因果関係では「危険の現実化」で論じ、その後の因果関係の錯誤では「相当因果関係の範囲内で符合しているので故意は阻却されない」と論じる答案を振り落とす問題だったのではないでしょうか。
 すなわち、因果関係の錯誤論で『お決まり』の論証「相当因果関係の範囲内で符合」を貼り付けた場合、それは因果関係について相当因果関係説を採っていることを前提とします。ですが、山口(・前田)説にいう危険の現実化は相当因果関係説とは異なるものであって、危険の現実化を全面に押し出すのであれば、因果関係の錯誤については別途違う論を立てる必要があります。そこを理解せずに因果関係について現在流行りの「危険の現実化」を採り、錯誤論は簡単にお決まり論証「相当因果関係の範囲内」で済ませると論理が破綻しているという評価を受ける、ということになると思います。
 確かに難しいんですよね。この問題は因果関係につき「行為時の特殊事情」ではなく「行為後の介在事情」を問うている問題なので、相当因果関係は使いづらい、というより危険の現実化が上手く当てはまる類型ですから。うーん…
 因果関係については、やっぱり相当因果関係でも、危険の現実化でも書けるようにしておいた方がいいと思いますねー…相当因果関係説は巷で「オワコン」化が叫ばれていますが、僕は全くそうは思いません。相当因果関係説は「当てはめ」に入るまでの「論証」がちょっと長いですが、「判断基底、基礎事情にいかなる事情を取り込めるか」(これがいわゆる「行為時の特殊事情」ですね)と「それらの事情を基礎として、行為から結果が生じることが相当といえるか」の問題とをしっかり分けることを意識して論じると説得力ある論述になると思っています。ここで佐伯教授と井田教授の因果関係論が参考になります。僕は井田教授の見解に主に依拠しています。
 因果関係の錯誤はまあ色々と考えてみると面白いかもしれませんね。)

(追記2:とおりすがりの方がコメントして下さったので、それを含めて追記します。
 本問は、首を絞めたときにAが死亡していた場合は問題なく殺人罪を認めることができるため、問題は衝突事故でAが死亡したときの罪責をどう考えるかになります。
 衝突事故においては客観面において「トランク詰め込み事件」と類似しており、危険の現実化法理によって殺人の因果関係を認めることができ、主観面における故意を認めて、ここにおいても殺人罪を認定できます。
 両方の場合でも殺人罪を認定できるので、結局Xは殺人罪の罪責を負うことになります。

 僕は首締めと衝突事故二つを分けることが時間的にもスペース的にも足りないと思ったので、答案では因果関係の錯誤で論じましたが、このように考えることが、論理的には正確だと思いました。コメントを感謝します。いやー旧司法試験っぽいですね。利益原則のお話ですか。)

(追記3:因果関係について、この問題は、「首絞め行為」(故意行為)→「トランクに詰める行為」(故意行為)→「自動車事故」(過失行為)→死亡結果発生と、行為が三つある事案です。そして、因果関係は、首絞め行為と死亡との間に認めたいのです。この点において、トランク詰め込み事件とは事案が異なります(トランク詰め込み事件は、上の二個目の行為と結果との因果関係を認めた事案)。さて、これをどうするか、ですが、ここで、砂吸引事件を思い出す必要があります。あの事件は、因果関係の錯誤で引かれる判例ですが、当然、錯誤論の前提として、首絞め行為→海岸に放置する行為→砂吸引→窒息死の因果関係は認められています。この判例と、トランク詰め込み事件の二つの判例を想起することによって、初めて今回の事案においても、因果関係を認めることができるのです。結局、因果関係は認められる事案ということでしょう。)




2.XがAの遺棄場所を探して山道に車を停めているとき、付近住民の通報で警察官Kらが登場。XはKらの質問に答える間もなく逃走をはかり、Kらはまずエンジンキーをまわしてスイッチを切り、それでもなおXが出発しようとするのでエンジンキーを抜き取って取り上げた。
 これで観念したXは、Kらの質問に答え始めたが、Xが挙動不審だったためKらは車の中を見せることをXにたずね、同意を得て車の中を懐中電灯で照らして点検した。続いて、KはXの明確な同意なく、施錠されていない後部トランクを開けたところ、その中にAの死体を発見した。 
 Kらの措置の適法性につき論じなさい。 



 なんというか…刑法にましてド典型問題というか…今年は井上正仁教授の退官の年なので、捜査を出したんですかね?と思ってしまいますね。過去5年は包括差押・伝聞・自白・接見指定と来ており、訴因と捜査が正面から聞かれていなかったので今年は訴因か捜査だろうなあと思っていたら捜査でした。

 強制処分と任意処分の区別について書かなかったので痛恨のミスかなと思っているのですが、初っ端から職務質問・所持品検査の適法性という論点決めうちで書き始めて、結局最後の行まで書いてしまったことを考えると、 結局書かなかった方が良かったのかもしれません(笑)。うーむ…これは書き方を身につけてしまっている人が有利ですね。僕はまだ固まっていないのですが。





 法律科目問題 2 公法系  (13:00~14:10)

 外国人に対する生活保護に関して、厚生労働省は外国人に生活保護法は適用出来ず、ただ通達に基づいて法と同一の保護を行うこと、適法な在留資格を有する外国人に対してのみそれを行うこと、という解釈を採用している。
 また、厚生労働省は、外国人に対する保護に関する決定について、外国人に対する生活保護は法律上の権利ではないので行政事件訴訟法上の処分には該当しないという解釈を示している。


問1 不法残留となった(在留期間更新申請行わず)無国籍者Aが、交通事故により重傷を負って入院、困窮のため医療費が払えないとして生活保護法に定める医療扶助を申請したところ、B福祉事務所長はAが不法滞在外国人という理由で申請を却下した。この決定は違憲か論じなさい。


問2 適法な在留資格をもつCは、通達に基づく保護を求めたところ、Bによって拒否された。さて通達に基づく(生活保護法に基づくものではない)給付を受けるために本案判決を得るためには、どのような訴えを提起することが適切か。





 例年東大ローの公法系は結構難しくて、しかも出題が29条×2、22条、議員の免責特権、雇用と男女差別と若干偏った出題となっており、今年は(統治を除けば)表現の自由か政教分離か大穴生存権(社会権)だな…と思っていたらド真ん中生存権来ましたね。
 毎年難しかったので(とても考えさせられる良い問題だとは思いますが)、今年何が出てもおとなしく玉砕されよう、と思っていたらこれでした\(^o^)/
 外国人がらみって慶応でも出ましたけれど、確かに「人権」とは何かということを直視できる気がするんですよね。まあ難しいんですけど…
 生存権が出るかな…と思った理由として、給付請求権を論じるときは審査基準論でないと難しいのではないかっていう意識があるんですよね。三段階審査、比例原則による審査はどうしても防御権に向けたものなので…


 問1については、こんなのどう考えても違憲と言いにくいよ…と思いながら、どうにか違憲にしたくてむちゃくちゃ書いた気がします。生存権は後国家的人権なので、と論じていくとどうしても外国人に25条の保障をおよばせるのは難しいなと思ったので、Aが重傷を負っていることをピックアップして13条前段で保障させました。適切だったかはかなり不明です。

(追記:本問は最判平成13年9月25日がベースのようです。本判決自体は至極簡潔に原告請求を棄却しており、あまり参考にはなりませんが。原審は東京高裁平成9年4月24日。判例タイムズ955号158頁です。原審における控訴人の主張が参考になるかもしれません。ここに判決があります。
 一応、14条1項の問題として「国籍」による差別を攻撃し、さらに25条1項生存権を二段階に分け、生きるのに必要最低限の保障は外国人にも及び、厳格審査が妥当する、として違憲と主張することはできそうかもしれません。客観法としての14条1項に引き付けて書くのがよさそうですね。)

(追記2:結局、25条と14条の二つを書く、というのが判例に従った書き方になります。25条は請求権ですから、自由権論証はできず、厳格審査とかも出来ません。したがって、制度準拠審査になるはずなのですが、本問、個別法(生活保護法など)が引かれておらず、制度準拠審査ができない形になっています。こうなると、25条の構成をさらっと書いて否定してから、14条の(客観法審査として)平等論証を書くというのが丸いのかなと思います。)


 問2については、問題文前半に思いっきり「外国人に対する決定は処分ではない」って書いてあるので、この厚生労働省解釈を打ち崩すか、それに従って処分性を否定した後に実質的当事者訴訟に持ち込むか、なのかなあと書いている途中で気づきました。時間ギリギリ。僕の字の汚さたるや。
 一応訴訟選択のみを聞いていたので、訴訟要件だけ論じて終わりにしました。実質的当事者訴訟として確認訴訟を提起する際は確認の利益を論じるべきなんですかね?
(追記:実質的当事者訴訟での訴訟形態は普通に給付訴訟でいいですよね…確認訴訟じゃなくていいですね…)





 法律科目問題 3 民事系(15:30~16:40)


 Xは、振出人を「Y株式会社」とするY、受取人B、(中略)とする額面500万円の約束手形(以下本件手形という) を、Bから裏書譲渡を受けて所持している。Xは満期に本件手形を支払場所に呈示し、拒絶された。

(1)本件手形振出しの経緯:Y社会計事務員だったCがBに頼まれて、振出行為の権限もなく、担当事務にも無いのに会社印を無断で押捺し、振出準備行為を行っていたDの割印を偽造したものをBに交付した。
 XはYに対して法律上どのような請求ができるか、考えられるものを挙げた上でその可否を論じなさい。





 ま さ か の 手 形 \(^o^)/
 4文字目に「振出人」って文字を見た時点で叫びそうになりました。ちょっと「フフっ」って言った気がする。
 東大ローの民事系は結構融合問題で、毎年結構考えて答えを出させる問題が出ていました。「民事系」という枠で民・商・民訴の3法を出題しなければいけないので、ここ4年間は連続して民法・民訴の二つが出ていました。僕としてはそろそろ5年前に出てた会社法が出ないかなと思っていたところ、会社法をスルーして手形法でちゃいましたね。手形法は去年の冬学期に授業でやったきりだったのでもうほとんど記憶に無く、条文をとりあえず引く姿勢で挑みました。

 本件については、振出行為が完全に無権代理ですので、民法上の表見代理は使いにくいように思います。僕は否定しました。で、手形行為独立原則(7条)をあげて即時取得(16条2項・本件約束手形なので77条で準用して)を書いて、請求可、としましたが…

 調べたところどーもこれ違うっぽいっすね(笑)。完全な無権代理みたいなので。
 本問は無権代理としてYには請求出来ず、Cに責任追及(8条)するか、Yに対しては手形偽造として表見代理を類推適用するか、使用者責任を問うか…だと思いました。この中では使用者責任が一番いけそうですけれど。 

(追記:手形偽造の被偽造者に対し、直接の相手方(本問B)以外の取得者が責任追及する場合については使用者責任(判例)か、権利外観理論(学説・表見代理の基礎にある理論を使う)で攻めるのが正しいようですね。)

(追記2:つまり、手形法の問題のように見せながら、実は完全に民法の問題だったということなのでしょう。本問において、本人には帰責性がないですから。かつ、Xは直接の相手方ではないことから、判例に従えば、表見法理はそもそも使えなくなります。)



(2)XのYに対する本件手形金500万円の支払請求訴訟がX勝訴で確定した。XはそこでY社所有の甲土地に対して強制執行をかけようとしたところ、勝訴判決2日後に甲土地はEに対して譲渡されていた。さてXはEに対してどのような請求ができるか。
 訴えを提起した場合の請求の趣旨がどのようなものになるかを示した上で、X勝訴のためにはどのような事実関係を主張・立証すべきか検討しなさい。



 お い 最 後 の 一 文 
\(^o^)/ 
 言っておきますが、これ全3問で70分の試験ですよ…?と思いましたね、見て。これ一瞬当事者の特定承継人の話かと思ったんですけど、よく見たら甲土地は前訴の目的物じゃないので、多分Eは115条で既判力拡張される人にあたらないですよね?
 ですので、僕は詐害行為取消訴訟を書きました。請求の趣旨が何でXの主張立証はよーわかりませんでした。うーん…
 これ要件事実論なんですかね。詐害行為取消の要件事実なんて知らんぞ。詐害行為取消ではないのか…?

(追記:
「請求の趣旨とは、訴訟における原告の主張の結論となる部分であり、訴えを持って審判を求める請求の表示のことを意味し、原告が勝訴した場合にされる判決の主文に対応するものです。」
「請求の趣旨に、給付の法的性質や理由などは記載しないのが実務の扱いとなっています。」(新問題研究2頁)
らしいので、本問もし詐害行為取消訴訟なら

「被告とYが○年○月○日にした甲土地の売買契約を取り消す。被告は、甲土地について所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。」

 になるのでしょうか。詐害行為取消訴訟の場合は2個いるんですね!!そういえば債権総論でやった記憶がありますよ…訴訟の法的性質とかで。全然思い出せなかったですが…)






(3)XがYに対して本件手形金500万円の支払を求める訴えを提起した。YはXの請求原因事実について全て認めた上で、本件振出行為はBの強迫によるものであるので取り消す、と陳述した。
 第一審はX請求を全部認容、Y控訴。
 Yは、控訴審の中でY社は商号を「S」に変更し(変更日付は手形振出後、訴え提起前)、同日「Y」と称する新たな会社(以下「F」)を設立したことを主張した。そのため、現在のY社は設立前に生じた手形債務を負ういわれがないので第一審口頭弁論期日に行った自白を撤回する旨陳述した。
 Xは、F社は従前のY社と実体が同じであり、債務を免れるためだけに設立されたことを主張した。
 上記事実がいずれも認められる場合、控訴審はどのように審理・判決すべきか、論じなさい。



 だ か ら 試 験 時 間 は 7 0 分 し か な い と 何 度 も
 結構難しい気がします。一応、自白の撤回の可否を論じた上で(本件においては撤回否定)、法人格否認の法理を裁判所が勝手に言っても良いのか、という論点かな…と思って弁論主義と一般条項の話を書いたのですが…





 ここまで読んでくださった方はありがとうございます。総じて時間が足りなかったです。結果は12月7日に発表されますが、受かっているといいですね。難しかったですが、解いていて面白かったです。70分×3の試験しか受けていないのに疲れました…予備試験と司法試験はもっと長いんですよね。頑張らないと。これから択一の勉強を始めようと思います。問題についてアイディアがある方いらっしゃいましたらコメントをください。そうでない方も是非コメントください。
 今日入試があった方は本当におつかれさまでした!来週も入試の方は頑張ってください!