【同一著者】

 一人の先生が一貫して書いた基本書で何か挙げろ、と言われたら…です。我妻民法シリーズもありますが、手に入りにくいのと基本に据えるのは難しいということで挙げてはいません(笑)
 我妻・有泉コンメンタールを追記しました(6月29日)。



内田貴『民法Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ』


民法I 第4版: 総則・物権総論民法II 第3版: 債権各論民法 III [第3版] 債権総論・担保物権民法IV 補訂版 親族・相続


感想
→元東京大学教授、現法務省参与、内田先生による民法の教科書です。おそらく現在もっとも有名なシリーズではないかと思います。
 本シリーズについてはそれぞれの記事でレビューしておいたので、今更書くこともないとは思いますが…(笑)

 基本書の量がどうしても多くなりがちな民法において、全範囲を4冊でカバーできるのは良いところですね。本書の良さとして、ケースメソッド方式が徹底されていることが挙げられます。あと、説明がわかりやすいです(特にⅠ・Ⅳ。Ⅱの不当利得・不法行為は難ありですが)。
 他の法分野の文献(主に基本書)に数多く引用されていること(我妻民法に次ぐ印象があります)からもわかるように、やはり民法学の第一人者であることは疑いなく、記述内容には信頼がおけると思います。キラリと光る記述が所々に落ちていて、それを探しながら読むのも良いかも。

 本書の欠点としては、やはり自説を全面に押し出しすぎているきらいがあることでしょうか。判例通説を丁寧に説明した後でその問題点を指摘し、自説につなげるのであれば良いのですが、判例通説の説明が不足している箇所があるのが少し使いにくさを感じさせるかなと思います。
 あと、他の基本書と比べて要件・効果が曖昧になっているところがあります。これも、気になる人には気になるでしょう。


 以上、本書は基本書に据えて全く問題ないとは思いますが、判例通説が少し軽視されている印象を受けるため、僕としては参考書としての用途が一番かなと思っております。





川井健『民法概論1・2・3・4・5』


民法概論 1 民法総則 第4版民法概論〈2〉物権民法概論〈3〉債権総論民法概論 4 -債権各論 補訂版民法概論 (5)


感想
→我妻博士の弟子である、川井健一橋大学名誉教授の手による民法の基本書です。
 
 上記内田民法とは良い意味で対照的な基本書です。各項目につき、判例と各学説を淡々と並べてゆくオーソドックスな叙述スタイルをとります。図表もなく、ケースメソッドでもありません。ゆえに多少退屈な感じを受けますが、記述自体は非常にわかりやすいです。

 自説の主張は抑えられており、記述の濃淡はあまり感じられません(その意味でも内田民法と対照的です)が、我妻民法を受け継いでいる(?)だけあって、内容は伝統的通説に立った穏当なものが多いです。学説の最先端ではなく、通説的・穏当な見解を知ることができるという意味で信頼がおけるシリーズです。

 判例・学説を整理して並べてくれているため、図書館でちょっと疑問に思ったときは「とりあえず川井民法を読んでみるか」という感じで本書を紐解くことが多いです。困ったときの川井先生、という感じですね。
 
 内田民法が肌に合わない人はこのシリーズをオススメします。誤字脱字が目立つかなと思うところもありますが(笑)、僕自身、非常に好きな基本書です。是非検討してみて下さい。



我妻榮・有泉亨ほか[編]『我妻・有泉コンメンタール民法』[第3版] 


我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権
我妻・有泉コンメンタール民法〔第3版〕: 総則・物権・債権


感想
→我妻博士が書いたコンメンタールの財産法部分のみをそのお弟子さんたちがまとめられ、現行法に合うように補訂したものです。原文は維持されており、我妻民法学を垣間見ることが出来ます。家族法分野を除いた民法、1条から724条までの解説がなされています。民法の条文は現代語化前のものと並列されています。

 8月中旬に第3版が発売されるようですね。最近2版補訂版を買った僕としては大変悲しいですが…(笑)

 財産法の分野を網羅しており、とても使いやすいコンメンタールだと思います。僕は民法の短答試験の過去問を解く際に、手元の教材に載っていない情報をこの本を使って確認し、手元の教材に書き込む、という方法を採っていました。

 欠点を挙げるとすれば、原文は我妻博士が昭和25,26年に書かれたものでして、編集方針がなるべく原文に手を加えないというものなので、若干古い記述が散見されるな、というところです。ですが、それをわかって読めば全く問題ないと思います。むしろ読みやすかったりするのではないでしょうか。 

 もう一つは、紙面の都合だとは思いますが、判例の引用の仕方が「最判昭和○○年○月○日民集○○巻○○頁」 となっており、民集の何号かがわからないことです。なんででしょうね?

 実務家の方からの信頼も厚い(さすが、我妻民法というだけありましょうか。)一冊でして、僕も、正直本書が一冊手元にあるととても便利だなと思います。最終的には基本書ではなくこれだけを使うような気もします(笑)。事項索引、判例索引もきちんとついており、安心して使えるコンメンタールとして候補にいれておくと良いと思います。