前の日記
で、ブックレビュー一冊目はビブリアだーとか言っておきながら、一冊目はこれです。

刑法と民法の対話


図書館で借りて、はじめ3章だけ読んで時間無くなって返却しました(笑)


刑法上の論点で民法とからむところを、それぞれの分野における第一人者である佐伯教授と道垣内教授が議論しあうものとなっています。 

雑誌連載をまとめたもので、連載時は「民法と刑法の対話」だったものを、佐伯教授の問題提起が多く刑法中心になってしまったので、書籍化する際にタイトルを入れ替えたとか。

内容は財産犯を中心として、民法上の所有権、占有権と刑法上のそれらがどのように違っているか、法律間でそろえるべきではないのか…などについて議論を重ねていきます。
実際、刑法を学んでいる中で「民法と刑法では保護法益が違う」「民法と刑法の概念の違い」などで片づけられることの多い問題について、深く考えてみると…

一例をあげると、金銭につき「占有=所有」説が民法上通説とされています(と、刑法学は理解しています)。これはいかなる意味なのか?もしこれを前提にすると、金銭を人に預けて何かを頼む際、受託者が寄託された金銭を依頼されたものと違う用途に使ってしまった場合、金銭の占有=所有権は受託者に移ってしまい、所有権侵害罪たる横領罪が成立しないことにならないのか?それは明らかに妥当ではなく、刑法の中ではこのような場合の金銭はいまだに寄託者の所有の下にあるとします。このような理解でよいのか?
この問題につき、そもそもの「占有=所有」説の起源からたどって解きほぐしていきます。

その他、不法原因給付の時の所有権の所在とか、銀行預金の場合の所有権とか…


普段見過ごしがちな問題(それらは往々にして現実ではよく起こりうる問題だったりします)について、立ち止まって考えてみる時間もあっていいのではないか。


まだ全部読んでいませんが、大変面白いです。時間がある人は是非読んでみてください。 
ただ、民法につき債権総論、担保物権の知識が必要なところもあるので、それらを学んでいない人は難しいかも。


刑法と民法の対話
刑法と民法の対話